自転車の二人乗りで、銃を撃ってくる人とか、ハンマーで襲ってくる人を避けながら駅へ。
駅ビルのデパート。
ガラスに自分の姿が映る。長い髪、ベージュ色のスーツを着ている。(←夢を見ている本人である私とは異なる容姿)
開店前のコーヒーショップの入り口を無理やり開けて注文する。
メニューに載ってないクラブハウスサンド3つ、お持ち帰りで。
奥でなにやら作業をやっていたおにーさんが人当たりの良い感じで答える。
心得ております。お出口はそちらになります。黒い扉から出てください。ただ、最近そこのケーキ屋が閉店したおかげで空間が不安定になってまして、扉の色が黒くなくなっているかもしれません。お気をつけて。
最後の一言はさわやかな笑顔付き。
短く刈り込んだ清潔感のある髪に眼鏡。ううむ。感じの良い店員だ。客で来るのも悪くないかもな。
で、そのダストシュートみたいな出口をくぐる。
3つの扉。朽ちかけた木の扉。一つをあけてみる。きしむ。農家の物置のような景色。鶏が見える。あきらかにここは違う。
もう一つは砂利を敷き詰めた地面。遠くに濃い緑の葉の木が茂る。川原。ビニールシートをしいてお弁当を食べているような人がたくさん居る。お花見の光景のようだが、誰も楽しそうではない。ここも違う。
と、仲間の一人が私の赤いバッグをその扉から外に落とす。自分もそっちから出ようとする。
何してるの、そっちじゃないわ。扉から完全出てしまってなければ戻れるはず。
仲間だと思っていた女は言う。
元々私はこっち側の人間なのよ。
妖しく微笑みながら、赤いバッグを持ち上げる。
私のバッグを返しなさい。
女はバッグを逆さにして、中身を辺りにぶちまけた。
さようなら。
女は空になった赤いバッグを持って去り。くそう、…見えるのに、扉から離れすぎていて中身を拾えない。
これで武器の大部分を失ってしまった。武器、といっても相手を傷つけるためのものではない、自分の身を守るためのものだ。
別の仲間が私をせかす。
早くはやく。先に行きますよ。
私は女が去った扉の向こうの川原の石を一個拾ってポケットに入れ、仲間の後を追った。
この扉で正しかったはず。
そこは、古いお寺か神社の裏手のようだった。
すぐそばに、古布に包まれた肌の赤い、赤子のような老婆が横たわっている。猿のようだ。確か、彼女が案内者だったはず。
すみません、わたしの仲間が2人、ここを通りませんでしたか?
もごもごと彼女が答えるが、よく聞き取れない。
顔を近づける。そばで見ると、赤い皮膚の上に黒くて硬そうな頭髪が生えているのが分かる。
「あの方の掛け軸が…2つに分かれた時に…」
あの方って誰?赤い猿のような人?
後は何を言っているのか分からない。老婆は眠ってしまったようだ。
建物の表に出る道があり、白い石畳が見える。観光客も来ている。有名な神社か仏閣のようだ。
逆の道は、右方向へ曲がりながら緩やかに建物の裏手を登っていく坂道だ。
坂道の方だろう。見覚えがある。懐かしい空気の匂い。
私はおそらく記憶の半分以上を失っている。
さらに、武器を失い仲間とはぐれたこの状態で、目的地まで辿り着けるのか。
なんて事を思いながら坂道を登り始めた時に、目が覚めた。
 
家を出なきゃならない時間の5分前だったので、たいへん焦った。
 
夢の中で出てきた台詞などを起きた後まで覚えていたのが大変珍しかったので、夢の雰囲気を忘れる前にあわててメモしてみた。